肩が動きにくいとき、私たちは「肩まわりの筋肉が硬いのかな」と思いがちです。けれど実際には、腰から骨盤の位置が肩の動きに大きく関わっていることが研究で分かってきました。
骨盤は体の中心にあり、上半身と下半身をつなぐ“土台”のような存在です。その角度や傾きが少し変わるだけで、肩をどのくらい自由に動かせるかが変化するのです。
研究で分かったこと
今回の研究では、健康な若い人たちにいろいろな骨盤の姿勢をとってもらい、肩の動きを測定しました。骨盤を前に傾けたり後ろに傾けたり、左右に回したり片方を持ち上げるように傾けたりと、意図的に姿勢を変えてテストしたのです。
その結果、骨盤を前に傾けると腕を前に上げる動きはしやすくなる一方で、腕を後ろに伸ばす動きは制限されました。逆に骨盤を後ろに傾けると、後ろへ腕を伸ばすのは楽になりますが、前に挙げるのは難しくなります。
また、骨盤を左右に回すと、回した側の肩を前に上げる動きや反対側の肩を後ろに伸ばす動きがやりにくくなりました。片側に傾けた場合は、傾けた側の腕を横に広げる動きが制限される傾向がありました。
つまり、骨盤の向きや傾きによって、肩の動き方にはっきりと違いが出るのです。
なぜそんなことが起きるのか?
理由のひとつは、骨盤の位置が体のバランスに影響するからです。骨盤が前や後ろに傾くと、背骨や胸の姿勢が変わり、その結果として肩甲骨の動きも制限されやすくなります。
もうひとつは筋肉や体を覆う膜(筋膜)の張り具合です。骨盤がずれることで体の前面や背面の張力が変わり、それが肩の可動域に影響していると考えられます。
日常生活で活かすヒント
この研究から言えるのは、肩の柔らかさを取り戻すには肩まわりだけを動かすのでは足りない、ということです。
・腕を前に挙げにくい人は、骨盤が後ろに傾いていないか意識してみる。
・腕を後ろに伸ばしにくい人は、逆に骨盤を反らしすぎていないか確認する。
・肩を横に広げる動きが硬い人は、骨盤が左右どちらかに傾いていないかチェックする。
姿勢を整えるだけで、肩の動きがスムーズになる可能性があります。
まとめ
肩の不調や動きにくさは、肩そのものの問題だけでなく、骨盤を含めた体全体の姿勢からも影響を受けます。肩こりや腕の動きに悩む人は、骨盤の傾きや立ち姿勢を意識してみると改善のヒントになるかもしれません。








