骨の健康:動くこと vs 座ってばかりでいること
私たちの体の骨は、ただそこに“ある”だけではありません。使われたり、重さを支えたり、動かされたりすることで強く保たれています。逆に「長時間じっとしていること(座っている時間が長いこと)」は、骨にとってよくない影響があるという研究が増えています。
この論文は「動くこと(運動)」と「座りがちでいること」が骨にどんな影響を与えるか、子どもからお年寄りまでの年齢を通して、何が分かってきたかを整理したものです。骨の丈夫さ(骨密度)や骨折のおこりやすさなどを中心にまとめています。
年齢による違い:子ども → 成人 → 高齢者
子ども・思春期
- 成長期にある子どもは、運動やジャンプするような体に負荷をかける活動(たとえばジャンプ、走る、跳ねるなど)をすると、骨が強くなることがたくさんの研究で示されています。特に、足などで体重を支える場所の骨が強くなる傾向があります。
- 一方で、長時間座っている時間が多いと、これらの成長や骨づくりに悪影響を及ぼすことがあります。
成人・中年
- 中年期には運動する頻度や種類が、将来の骨折リスクや骨の強さに影響してきます。たとえば、筋肉を使う運動や、体重をかける運動(階段を使う、重りを持つなど)がプラスになります。
- 座っている時間が極端に長い人は、運動している人と比べて骨が弱くなるリスクが上がる、という報告があります。
高齢者・閉経後の女性
- 年を取ると骨はもろくなりやすく、また転びやすくなるため、骨折のリスクが上がります。この時期には、軽い運動でも効果があります。たとえば、ゆっくり歩いたり、家事をしたりするような軽めの体を動かす活動でも、骨への悪影響を抑える助けになると示されています。
- また、座ってばかりいる時間を少しでも動く時間に変えること(たとえば、座るのを休んで立ち上がる、短い散歩を入れるなど)が、骨の健康維持に役立つ可能性がある、ということが指摘されています。
「座っている時間」を少しでも減らす工夫がカギ
このレビューで特に強調されているのは、たとえ本格的な運動が難しい人でも、「座ってばかりでいる時間を減らして、少し体を動かす時間を増やすこと」が大切だ、という点です。以下のようなアイデアがあります:
- ・長時間座る作業途中に、なるべく立ち上がる
- ・長時間のテレビ視聴やスマホ使用の合間にストレッチや歩行をする
- ・用がなくてもエレベーターを使わず階段を使う
- ・座った状態から立ち上がる動きを日常に取り入れる(たとえばリモコンを取る時など)
これらは軽めの動きですが、積み重なると骨に好影響を与えます。特にお年寄りや骨折しやすい人にとっては、重い運動をいきなり始めるより、このような工夫を取り入れる方が現実的で安全です。
公衆衛生の視点から
このレビューは、骨粗しょう症予防なども含めて、社会全体で「動くことを促す」「座りがちな生活を見直す」ことが重要だとしています。学校での体育、職場での休憩の取り方、公共施設や地域で歩きやすい環境づくりなどが含まれます。 WHO(世界保健機関)の運動と座っている時間に関する指針を守ることも推奨されています。
まとめ:骨を守るためのシンプルなルール
では、今日からできることをまとめるとこんな感じです:
- 1.定期的な運動を生活に取り入れる。特に「足で体重を支える運動」(歩く、階段を使う、ジャンプなど)や、少し強めの運動も効果がある。
- 2.長時間座りっぱなしを避ける。1時間座ったら立つ、散歩するなど、こまめに動く。
- 3.年齢に応じた運動を選ぶ。若いときは強めの運動を、年を取ってからは無理せず、軽めの体の動きでも骨にいい影響を与える方法を選ぶ。
- 4.生活環境を整える(歩きやすさ、休憩しやすさ、運動のしやすさなど)を考える。
骨は“未来のための貯金”ともいえます。今少し体を動かすこと、立つこと、歩くことを意識するだけで、将来の骨折リスクを下げたり、骨を強く保てたりする可能性が十分あります。このレビューは、そんな“小さなことだけど大切なこと”を思い出させてくれます。








