ストレッチといえば、多くの人が運動前に行う習慣のひとつですよね。足を伸ばしたり、腕を引っ張ったりして、その姿勢のままじっと止める「静的ストレッチ」。学校の体育の時間や部活の前に誰もが一度は経験したことがあるでしょう。しかし最近では「静的ストレッチは運動前にやるとパフォーマンスを下げる」という話も耳にするようになり、やった方がいいのか悪いのか迷っている方も少なくありません。
2019年に発表された研究では、この疑問に対するひとつの答えが示されています。それは「ストレッチの時間の長さによって効果が変わる」ということです。これまで「ストレッチをすると筋力や瞬発力が落ちる」と言われていたのは、主に1分以上の長い時間ストレッチをした場合に起こる現象でした。筋肉を長く伸ばしすぎると、一時的に筋肉の反応が鈍くなり、ジャンプ力が落ちたり、スタートダッシュが遅くなったりするのです。特に競技スポーツのように小さな違いが結果に直結する場面では、こうした影響が無視できないと考えられています。
一方で、1つの筋肉に対して60秒以内の短時間であれば、ほとんど悪影響はなく、むしろ体を動かしやすくする効果が期待できます。さらに動的ストレッチや軽いジョギングなどを組み合わせると、筋肉や関節の温度が上がり、神経と筋肉の働きも高まって、ケガの予防につながることがわかっています。つまり「短い時間のストレッチ+体を動かす準備運動」が最も理想的なウォーミングアップといえるのです。
日常生活に置き換えて考えると、趣味のスポーツやジムでの運動前に行うストレッチは、1部位あたり30〜60秒ほどにとどめ、その後に軽く体を動かして心拍数を上げるような運動を加えると安心です。逆に、長く伸ばしてじっくりと筋肉を伸ばしたい場合は、運動の後やお風呂上がり、寝る前などリラックスしたいタイミングで行うのがおすすめです。目的やタイミングによって使い分けることが、ストレッチを効果的に活かすポイントといえるでしょう。
これまで「静的ストレッチは良くない」と一括りにされてきた考え方は、最新の研究によって少しずつ修正されつつあります。正しく行えば、静的ストレッチは悪者ではなく、柔軟性を高め、ケガを防ぎ、運動の質を高めてくれる心強い味方です。大切なのは「どれくらいやるか」と「いつやるか」を意識すること。皆さんもぜひ、今日から自分の生活や運動習慣にあわせて、静的ストレッチをうまく取り入れてみてください。








