昼と夜の光が、心の健康を左右する?

2025.10.18

― 約8万5千人を調べた最新研究から ―

私たちは毎日、朝になれば明るくなり、夜になれば暗くなるという自然のリズムの中で生きています。
しかし、スマホやパソコン、夜遅くまでの照明などで「夜も明るい生活」を送る人が増えています。
そんな現代の光環境が、私たちの心の健康にどんな影響を与えているのか。

それを明らかにした大規模な研究が、イギリスの学術誌「Nature Mental Health」に発表されました。

■ どんな研究?

研究チームは、約8万5,000人の人を対象に、センサーをつけてもらい、1週間分の「昼と夜の明るさ」を記録しました。
同時に、それぞれの人のうつ病、不安、PTSD(心の傷によるストレス障害)などの有無も調べ、
光の当たり方と心の状態との関係を分析しました。

■ 夜の明るさが心に悪影響

結果は夜に明るい光を浴びる人ほど、うつ病や不安症、PTSD、双極性障害などのリスクが高いことが分かりました。

たとえば、夜でも部屋の照明をつけっぱなしにしたり、寝る直前までスマホを見ていたりする人は、
精神的に不調を感じる確率が高かったのです。

研究者たちは「夜に光を浴びると、体のリズムが乱れ、睡眠が浅くなりやすい」ことが一因だと考えています。

■ 昼の光は“心のビタミン”

一方で、日中によく光を浴びている人は、心の健康状態が良い傾向がありました。
特に、うつ病や不安感の少ない人は、昼間に屋外で活動している時間が長かったといいます。

太陽の光には、体内時計を整える働きがあります。
朝や昼にしっかり光を浴びることで、夜には自然に眠くなり、睡眠の質も高まります。
つまり、「昼に光をたくさん浴び、夜はできるだけ暗くする」ことが、
心のバランスを整えるための鍵になるということです。

■ なぜ光が心に関係するの?

人間の体には、「体内時計」と呼ばれる24時間のリズムがあります。
このリズムは、光の刺激によって毎日リセットされています。
しかし夜に強い光を浴びると、脳が「まだ昼だ」と勘違いしてしまい、
睡眠を促すホルモン「メラトニン」の分泌が減ってしまうのです。

その結果、眠れなくなったり、寝ても疲れが取れなかったりして、
気分が不安定になりやすくなります。
反対に、朝や昼にしっかり光を浴びると、体内時計が整い、
夜に自然と眠れるようになります。

■ 研究者のメッセージ

この研究を行ったチームは、
「光の浴び方を変えるだけで、心の健康を守ることができるかもしれない」と述べています。
薬を使わずにできる、とてもシンプルな方法です。

■ 今日からできる“光のセルフケア”

1.朝はカーテンを開けて光を浴びる
 起きたらまず自然光を取り入れましょう。散歩や通勤時に少し日を浴びるだけでも効果的です。

2.昼は屋内でも明るい環境で過ごす
 カフェやオフィスでは、できるだけ窓際や明るい場所を選びましょう。

3.夜は照明を落とす
 寝る2時間前くらいからは、間接照明や暖色系の明かりに変えるのがおすすめです。

4.寝室は暗くする
 テレビやスマホは寝る前にオフ。真っ暗が苦手なら、やわらかい常夜灯を。

■ まとめ

「昼は明るく、夜は暗く」――
この当たり前のリズムを守ることが、心の健康を支える大切なポイントです。
現代社会では、夜でも明るい環境が当たり前になっていますが、
少し意識を変えるだけで、私たちの睡眠や気分は大きく変わるかもしれません。

光の浴び方を整えること。
それは、心のケアの第一歩かもしれません。

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